【税理士監修】開業届に記載する住所は、何の住所を書けばよい?自宅や実家でもよい?
2023年10月24日
※こちらの記事は長谷工コミュニティが運営するビステーションのプロモーションを含みます。
新たに開業をする際に必要となる開業届。さまざまな事情で、どの住所を書けばいいのかわからないというケースが少なくないようです。そこで、この記事では、開業届に書くべき住所の考え方と、具体例などを整理してご紹介いたします。
個人事業主やフリーランスなどが提出する、開業届の住所は自宅でいい?オフィスにすべき?
個人事業主やフリーランスなどが事業を開始する際に、提出する開業届(個人事業の開業届出・廃業届出等手続)。この開業届に、記載する住所は、何のの住所を書けば良いのか?と悩まれる方が少なくありません。
まず、結論から申し上げますと、「納税地」の住所を記載するというのが回答になります。
例えば、エンジニアやライターとして、ご自宅で仕事をする場合はご自宅の住所を記載することになります。
一方、開業届には、事業所というチェック欄があるように、店舗などがある場合には、店舗の住所を記載しても大丈夫です。
また、オフィスを契約している場合、オフィスの所在地の住所を記載しても大丈夫です。
ただし、住所が、ご自宅で、賃貸で借りているアパートやマンションの場合は注意が必要です。詳しくは、以下で解説します。
長谷工が運営するシェアオフィス:ビステーション
開業届に記載する住所は、賃貸で借りているアパートやマンションでも大丈夫?
アパートやマンションに、賃貸でお住まいで、その住所を使いたいときは注意が必要です。
なぜならば、多くのアパートやマンションが、事務所利用が不可となっているからです。
その建物の場所によってはアパートやマンションを事務所として利用させてしまうと建築基準法違反になってしまう可能性や、住居から事務所へ使用用途が変わったことにより消防法違反になってしまうなどの法律違反になってしまう可能性があったり、大家さんが負担する税金の額が高くなってしまう可能性などがあるからです。
また、建物のセキュリティ上の観点から事務所利用を不可としているケースもあります。
もしも、事務所利用が不可の賃貸物件で、勝手に事務所として利用してしまうと、トラブルになってしまったり、場合によっては、退去せざるをえなくなってしまうなど、大きなリスクになってしまう可能性があります。
従って、借りているアパートやマンションを事務所として利用できるか否かは、賃貸借契約書やマンションの管理規約などを確認し、その上で貸主や管理会社に許諾を得ておいた方が良いでしょう。
もしも、借りているアパートやマンションが、事務所として利用できない場合に心強いのがシェアオフィス(レンタルオフィス、コワーキングスペース、バーチャルオフィス)です。
シェアオフィスは、賃貸でオフィスを借りることと比べると、非常に安い金額で、オフィスを使うことができますので、自宅が賃貸で、事務所利用が難しい場合などには、検討してみてもよいでしょう。
開業届の住所としても利用できる長谷工コミュニティが運営するシェアオフィス
開業届に記載する住所は、実家でも大丈夫?
借りているアパートやマンションが事業所として利用できないので、開業届の住所を実家にしておきたいという方もいらっしゃると思います。
結論からいうと、ご実家の住所を、開業届に記載することはできます。
具体的には、まず、納税地に、ご実家の住所を記載します。
次に、「上記以外の住所地・事業所等」欄に、現住所(賃貸などで借りている住所)を記載するということになります。
こうしておくと、税務署からの郵便物は、ご実家に届きます。しかし、その他の取引先との郵便物については、現住所に届きます。
もちろん、ご家族に事前に確認しておくことは大前提です。
しかし、仮に、屋号などを用いて事業を行う場合、ポストなどに屋号を記載する必要が出てくるので、こうなると、大家さんとのトラブルになってしまう可能性があります。
また、ご実家を、納税地とした場合、住民税に関しては、ご実家での均等割り課税が発生する可能性があります。
そう考えると、無理にご実家を開業届の住所(納税地)とするよりは、月額数千円で利用できるバーチャルオフィスなどを利用した方がよい良いケースも多いのではないかと思います。
開業届に記載する住所は、住民票と異なっても大丈夫?
何らかの事情で、住民票上の住所と、違う場所で生活をしているということもあり得ます。
このような場合、住民票と異なる場所を、開業届に記載しても大丈夫です。
納税地は、原則住所地です。
つまり、国内に住所がある人は、その住所地が納税地になります。
住所とは、生活の本拠のことで、生活の本拠かどうかは客観的事実によって判定されます。
また、国内に住所のほかに居所がある人は、住所地に代えて居所地を納税地とすることができます。(納税地の特例)
居所とは、相当期間継続して居住しているものの、その場所との結びつきが住所ほど密接でないもの、すなわち、そこがその者の生活の本拠であるというまでには至らない場所をいうものとされています。
参考:国税庁ウェブサイト
開業届に書いた住所は、公開されてしまう?
女性などでプライバシーの問題から、開業届に書いた住所について、公開されてしまうのか不安になる方もいらっしゃるようです。
結論からいうと、開業届に書いた住所が公開されてしまうということはありません。
しかし、一方で、名刺などに記載する住所をどこにするのか?という問題が生じます。名刺交換をして、そこに住所がない場合、契約書をどこに送ればいいのかわからないなどの問題が発生し、相手方も不審に感じてしまう恐れがあります。
もちろん、最近は、契約書などもクラウド上で済ませることができるようになってきていますので、全ての相手に住所を公開する必要はありませんが、新規に顧客を見つけたいと考えた場合、名刺には住所を記載しておいた方がよいでしょう。
このような場合も、バーチャルオフィスであれば、月額数千円から、コワーキングスペースであっても、月額1,2万円から利用できますので、シェアオフィス(レンタルオフィス、コワーキングスペース、バーチャルオフィス)を利用した方がいいかもしれません。
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事務所利用不可物件だけど、勝手に、開業届の住所を記載した場合、大家さんにバレる?
事務所利用不可だとわかったけれど、バレないのであれば、そのまま使ってしまいたいという方もいらっしゃるようです。
しかし、この方法は、おすすめできません。以下で、理由を解説します。
個人事業主やフリーランスの場合
個人事業主やフリーランスの場合、開業届に記載した住所がただちに公開されることはありませんので、すぐに第三者からわかるということは少ないと思います。
ただし、税務署からの郵送物については、どうしても、納税地に指定した住所に送られてくることになります。
また、屋号などをつけた場合、ポストなどに記載する必要も出てくる可能性があり、こうなると大家さんや、管理会社、近隣住民から確認することができてしまいます。
法人の場合
法人の場合は、さらに、バレるリスクが高くなります。上記、個人事業主やフリーランスの場合と同様、郵便物に関連して発覚するリスクがあることに加え、登記もリスクになります。
法人においては、法人登記をする必要があり、登記は公開されるものです。
従って、登記した住所がどこであるかは、法務局へ行けば簡単に判明します。
また、上述のとおり、事務所利用不可物件で、勝手に事務所利用してしまうと、大家さんにも相応のリスク(建築基準法、消防法など法令違反リスク、税金の額が高くなってしまうリスク、建物のセキュリティ上のリスクなど)がありますので、大家さん側も毅然とした対処が必要となるケースがあり、トラブルになってしまう可能性があります。
場合によっては退去せざるを得ないケースもあると思いますので、事務所利用不可物件を、勝手に事務所として利用することは避けた方がよいと言えるでしょう。
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開業届の住所は、後から変更できる?変更方法は?
引っ越しや、その他の事情で、開業届に記載した住所(納税地)を変更したい場合、書類を提出することで、納税地を変更することができます。
具体的には、「所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する届出書」を記載し、提出することになります。
また、提出先は、新たに指定する納税地を管轄する税務署になるため、管轄する税務署がどこになるのかを事前に調べておくとよいでしょう。
参考:国税庁ウェブサイト
まとめ:自宅住所が使えない場合、開業届の住所には、バーチャルオフィスがおススメ!
ここまでで、開業届に記載する住所に関するお悩みの多くについては、回答できたものと思います。
また、事務所利用不可の物件を、勝手に事務所利用してしまった場合のリスクについても解説してきました。
事務所利用不可物件にお住まいの場合、てっとり早く、住所の問題を解決できるのはバーチャルオフィスという選択です。
バーチャルオフィスは、リアルな空間はありませんが、事務所利用ができ、月額5000円前後で利用することができます。(サービス内容により、数万円する場所もあります。)
また、郵便物の転送サービスや、電話転送サービス、登記可能など、オフィスとして必要な機能を備えている施設もありますので、非常に便利です。
一方、どのようなサービスを提供しているかは、施設によって異なります。
また起業と併せて、銀行口座を作りたい場合や、借入をしたい場合にも注意が必要です。
過去に金融トラブルがあった施設や、入居審査をしていない施設については、銀行口座などが作れないケースがあるからです。
そのような点を踏まえると、入居審査をしているか?施設としてある程度の運営実績があるか?大手企業が運営している施設か?などは、確認しておくとよいでしょう。
また、作業場所も欲しい場合には、コワーキングスペースやレンタルオフィスという方法もありますので、併せて検討するとよいでしょう。
開業届の書き方や、開業届を出すメリットデメリットはこちらから
この記事の監修者
田村公認会計士・税理士事務所 代表 公認会計士・税理士 田村聡(たむら そう)
認定経営支援機関
会計・税務に関するコンサルティングを通じて、クライアントの利益の最大化を目的・目標として活動。
大きく分けて、税務顧問業務、節税コンサルティング業務、資金調達業務、M&A業務、会社設立支援業務などを行う。
新日本監査法人(現、新日本有限責任監査法人)、アクセンチュア株式会社、辻・本郷税理士法人(兼務:辻・本郷ビジネスコンサルティング株式会社)での勤務、会計監査・経営指導・税務を中心としたコンサルティング業務を行ってきた経験から、大手・中堅企業から、感謝されることに喜びを得る一方で、特に中小企業等を中心に公認会計士による会計・税務コンサルティングが行き届いていない現状を痛感。 公認会計士は、企業の内部管理体制の構築や銀行や投資家などに対する決算書の開示方法に精通していることから、公認会計士が会計・税務コンサルティングをすることにより、中小企業等が円滑な資金調達、経営収支や業務プロセスの改善など、経営をよくすることができる中小企業等がたくさん存在すると考え、監査法人及び税理士法人の両方での勤務経験を重ねて独立。 現在では、大企業から中小企業、起業家まで、会計・税務コンサルティングを提供し、高い評価を得ている。
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この記事の執筆者
unite株式会社代表取締役 角田 行紀
起業支援、事業支援や、最適な士業の無償紹介、士業が講師を務める企業研修事業(主に法務・労務・税務・財務)、経営者や士業などが講師を務めるセミナー事業などを行うunite株式会社代表取締役。
多くの起業家からの相談や、士業による起業希望者へのアドバイス、自身の起業経験などを基に本稿を執筆。