【先輩会計士監修】公認会計士が、開業・移転する場合、バーチャルオフィス、コワーキングスペース、レンタルオフィス、賃貸オフィスどれが良い?
2023年09月29日
※こちらの記事は長谷工コミュニティが運営するビステーションのプロモーションを含みます。
公認会計士が開業する場合、事務所形態は、どのような形態がベストでしょうか?
通常考えられる事務所形態としては、バーチャルオフィス、コワーキングスペース、レンタルオフィス、賃貸オフィスという方法がありますが、それぞれにメリット・デメリットがあり、注意点があります。この記事では、それぞれに比較し、解説します。
公認会計士が事務所を開業・移転する際、選択できるオフィス形態は、どのようなものがある?(自宅開業、賃貸オフィス、レンタルオフィス、コワーキングスペース、バーチャルオフィスなど)
公認会計士の先生が、開業や移転を考えた場合、自宅開業、賃貸オフィス、レンタルオフィス(シェアオフィス)、他士業や他業種との共同オフィスなどが考えられます。
(一般的なオフィス形態には、これらのほかに、コワーキングスペースやバーチャルオフィスという形態もありますが、公認会計士の事務所としては利用できない可能性があるため注意が必要です。(詳細は後述します。))
それぞれのオフィス形態のメリット・デメリットを比較してみましょう。
自宅開業の場合
メリット
・費用が安い
・通勤時間が不要
デメリット
・信用を得づらい
・依頼者や相談者を招きづらい
・プライベートと区別しづらい
・集中できない可能性がある
・自宅の一角が書類の山に埋もれるリスクがある
賃貸オフィスの場合
メリット
・信用を得やすい
・チームなど複数人で仕事をする場合に良い
デメリット
・毎月の賃料がかかる
・保証金(事業用のため、一般的には家賃の半年から1年分)が必要
・オフィス設備費用が必要
・会議室など、普段は使わないが用意すべき空間が必要
・移転時に原状回復コストが必要
レンタルオフィスの場合
メリット
・集中して仕事ができるスペースを確保でき、賃貸オフィスより安い
・オフィス設備が備え付けのケースがある
・受付スタッフなどがおり、来客対応もしてくれるケースがある
・駅近くなど、好立地の場所を使え、顧客利便性も高い
デメリット
・執務室が狭い傾向にある
・(選択する施設によっては)銀行口座などを作りづらいケースがある
※入居者の審査をしていない施設など
コワーキングスペースの場合
メリット
・集中して仕事ができるスペースを確保でき、賃貸オフィスより安い
・ある程度のオフィス設備が備え付けのケースがある
・受付スタッフなどがおり、来客対応もしてくれるケースがある
・駅近くなど、好立地の場所を使え、顧客利便性も高い
・(ケースによって)来客対応時に、会議室なども活用できる
デメリット
・執務スペースが共有スペースのため、集中できない可能性がある
・電話対応時、守秘義務や、施設のルールにより、わざわざ移動が必要
・(選択する施設によっては)銀行口座などを作りづらいケースがある
※入居者の審査をしていない施設など
・税理士登録したい場合、税理士事務所としては利用できない
バーチャルオフィスの場合
メリット
・賃貸オフィスなどに比べて、圧倒的に安い
・(施設によって)登記までできる
・(施設によって)来客対応時に、会議室なども活用できる
・(施設によって)来客対応を、受付スタッフが代行してくれる
デメリット
・執務がスペースない
・郵便物を取りに行くか、転送サービスなどを利用する必要がある
・(選択する施設によっては)銀行口座などを作りづらいケースがある
※入居者の審査をしていない施設など
・税理士登録したい場合、税理士事務所としては利用できない
※注意点
公認会計士の事務所には、コワーキングスペースやバーチャルオフィスに関する利用制限はありませんが、税理士事務所としては、コワーキングスペースやバーチャルオフィスは利用できません。
参考:日本税理士連合会 業務対策部 税理士事務所FAQより一部引用
税理士等が自ら管理できない場所は、「税理士業務の本拠」となり得ないため、税理士事務所と認めることはできないと考えられます。 ~中略~ 税理士等が自ら管理できない場所には、例えばメタバース上に設置された事務所などのいわゆるバーチャル事務所が含まれます。更に、税理士事務所は自己所有または賃貸借契約など自らの管理下とする場所であることが求められますが、これは、親族等が所有又は賃貸借しているものを使用貸借等する場合を含みます。一方で、オフィス環境を他者と共有する形式で事務所スペースを独占的排他的に使用することができない、いわゆるコワーキング(co-working)スペース等の利用権契約に基づき使用されている場合には、本拠とすることが不適当ということになります。
長谷工が運営するシェアオフィス:ビステーション
公認会計士が開業・移転する場合、どのオフィス形態がベスト?
どのオフィス形態がベストかは、一概には言えませんが、取り組む業務と、顧客層、地域柄など、それぞれの置かれた状況によって変わってくるといえます。
例えば、顧客がもともと付き合いが長く、相互に信頼関係が築けており、今後も大きく増やしていくつもりがないならば、自宅オフィスやコワーキングスペースなどでも十分かもしれません。また、顧客との電話相談が少ない場合には、コワーキングスペースでもいいかもしれません。
ただし、上述しましたが、公認会計士業務と併せて、税理士業務を行う場合には、コワーキングスペース、バーチャルオフィスは利用できませんので、注意が必要です。
一方で、今後も事務所を拡大したいと考える場合には、レンタルオフィスか賃貸オフィスを検討するケースが多くなるのではないでしょうか。
オフィス形態の選択で迷った場合、イメージとしては、「中心業務×顧客属性×信用性の担保×かけられるコスト×執務環境に求めるもの」の5軸に分解して、検討すると良いのではないかと思います。
また、公認会計士資格を取得して間もない場合や独立して間もない場合などは、まだ中心とする業務が定まっていないケースもあるかと思います。このような場合は、一旦、バーチャルオフィスと自宅オフィスの併用やレンタルオフィスなど、費用が比較的抑えられる方法を選択し、その後業務の方針が定まった後で、最適なオフィス形態を選択すると言う方法も考えられます。
先輩公認会計士がレンタルオフィスを活用している事例やブログなどはある?
レンタルオフィスやシェアオフィスサービスが広まってきたのは、比較的最近のことですが、事業会社でのレンタルオフィスやシェアオフィス利用の増加とともに、公認会計士などの士業事務所でも、レンタルオフィスやシェアオフィスを利用するケースが増えてきている印象です。
そこで、実際にレンタルオフィスやバーチャルオフィスを利用している公認会計士の先生のブログ記事をご紹介します。
①マガジン「独立会計士のリアル」 たろうさん
こちらの先生は、千代田区内の住所が欲しかったため、千代田区内のバーチャルオフィスと、ご自宅近くのシェアオフィスの2つを契約していたそうです。
また、独立して1年後には、賃貸オフィスに移転されたようです。
②木山公認会計士事務所さん
公認会計士・税理士が開業してすぐ事務所を借りてみてどうだったかの感想【1年3か月経過】より
こちらの先生は、開業してすぐに、個室のレンタルオフィスを借りられたようです。総評として、ご自身としては、自宅事務所ではなく、借りてよかったと結ばれています。
公認会計士が開業する場合、必要なものは?その費用はどれくらい?
公認会計士の先生が開業する場合、いくらくらいの費用がかかるのでしょうか?
結論から言えば、一般的には、自宅開業など、ミニマムで考えるならば50万円程度で開業できます。一方でオフィスを用意する場合は100~150万円程度は必要になるでしょう。
必ず必要になる費用
・公認会計士協会への入会金や会費等:合計約27万円前後
内訳
・入会金と施設負担金を合計して8~9万円
・登録免許税として6万円
・本部会及び地域会費を合計して年間で10~12万円程
公認会計士の先生が開業する場合、以下のようなものが必要になります。
・事務所
・職印
・名刺
・パソコン、プリンター
・電話、FAX
・机、椅子
・書類棚
・ウェブサイト
この中で、費用を抑えやすいものは、設備と、家賃(保証金なども含む)です。
設備に関しては、中古品を上手に使うという方法があります。中古品を活用することで、30%~50%程度費用を抑えることも可能です。
さらに、レンタルオフィスやコワーキングスペース、バーチャルオフィスを活用するという方法の場合は、中古品を活用する以上にコストを抑えることができます。なぜならば、プリンターなどの複合機やインターネット環境、机、椅子などが備え付けになっており、そもそも新たに用意する必要がないケースがあるからです。
しかも、毎月の家賃も低く、保証金も賃貸オフィスに比べると、非常に安くなります。
新橋付近で賃貸オフィスを利用したケースと、ビステーション新橋を1人で利用した場合のオフィス・設備コストを具体的に比較すると次のとおりです。
例)
新橋などの駅近くで賃貸オフィスを構える場合
・毎月の家賃:最低毎月10~15万円程度
・保証金:家賃の6~12か月分程度(60万円~180万円前後)
・仲介手数料:家賃の1か月分程度
・設備:必要に応じ(20万円仮定)
・内装費:必要に応じ
年間で、約190万円~
ビステーション新橋のレンタルオフィスプランを一人で活用した場合
(ビステーション新橋を利用したと仮定)
・毎月の家賃:最低毎月約5.4万円~
・入会金、保証金、事務手数料:約13.5万円~
・仲介手数料:不要
・設備:不要
・内装費:不要
年間で、約78万円~
比較すると、約60%程度コストを抑えることができます。
もちろん、コワーキングスペースや、バーチャルオフィスを選択した場合は、更に費用を抑えることができます。
長谷工が運営するシェアオフィス:ビステーション
公認会計士が開業する際に使える補助金や助成金は?
公認会計士として開業する場合、使える補助金や助成金もあります。
例えば、東京都で開業する場合は、東京都中小企業振興公社が助成する、創業助成金が利用できる可能性があります。
参考:創業助成金(東京都中小企業振興公社)┃東京都創業NETウェブサイト
また、小規模事業者として、販路開拓等の取組をし、制度の要件を満たす場合には、小規模事業者持続化補助金を活用できる可能性もあります。
これら以外にも、補助金や助成金には、経済産業省系のもの、厚生労働省系のもの、国や市区町村などが実施する補助金や助成金などを活用できる可能性がありますので、調べてみると良いでしょう。
先輩公認会計士は、仕事がない状態を、どう打開している?
スタート時点は人脈やお金が不足することが一般的です。このような場合、先輩公認会計士は、どのように解決しているのでしょうか?
一般的には
・(前職がある場合)前職時代の伝手をたどる
・ウェブサイトで集客する
・SNSなどで告知する
・知人や友人に紹介依頼をする
・経営者会などに参加する
・DMを送る
といった方法が考えられます。
新規集客方法は、ビジネスモデルや、本人の特性によってもさまざまですが、この点レンタルオフィスなどのシェアオフィスには、賃貸オフィスと比較すると、優位性があります。
なぜならば、レンタルオフィスには、新規開業をする方など、多くの起業予定者や経営者が自然と集まるからです。
同じオフィスを使って、顔をあわせていたら、そこから仲良くなり、仕事になったという話も少なくありません。
レンタルオフィスなどのシェアオフィスは、「戦略的に」使うという方法もあり得ると言えるでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?公認会計士の先生が開業する際、コストや利便性、戦略的な面から、レンタルオフィスは有力な候補のひとつになり得ると思います。一方で、コワーキングスペースやバーチャルオフィスの利用は注意が必要なため、利用したい場合には、自宅を主たるオフィスにし、作業場所として利用するなどの方法が必要になるかもしれません。
長谷工が運営するシェアオフィス:ビステーション
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この記事の監修者
田村公認会計士・税理士事務所 代表 公認会計士・税理士 田村聡(たむら そう)
認定経営支援機関
会計・税務に関するコンサルティングを通じて、クライアントの利益の最大化を目的・目標として活動。
大きく分けて、税務顧問業務、節税コンサルティング業務、資金調達業務、M&A業務、会社設立支援業務などを行う。
新日本監査法人(現、新日本有限責任監査法人)、アクセンチュア株式会社、辻・本郷税理士法人(兼務:辻・本郷ビジネスコンサルティング株式会社)での勤務、会計監査・経営指導・税務を中心としたコンサルティング業務を行ってきた経験から、大手・中堅企業から、感謝されることに喜びを得る一方で、特に中小企業等を中心に公認会計士による会計・税務コンサルティングが行き届いていない現状を痛感。 公認会計士は、企業の内部管理体制の構築や銀行や投資家などに対する決算書の開示方法に精通していることから、公認会計士が会計・税務コンサルティングをすることにより、中小企業等が円滑な資金調達、経営収支や業務プロセスの改善など、経営をよくすることができる中小企業等がたくさん存在すると考え、監査法人及び税理士法人の両方での勤務経験を重ねて独立。 現在では、大企業から中小企業、起業家まで、会計・税務コンサルティングを提供し、高い評価を得ている。
この記事の執筆者
unite株式会社代表取締役 角田 行紀
起業支援、事業支援や、最適な士業の無償紹介、士業が講師を務める企業研修事業(主に法務・労務・税務・財務)、経営者や士業などが講師を務めるセミナー事業などを行うunite株式会社代表取締役。
多くの起業家からの相談や、士業による起業希望者へのアドバイス、自身の起業経験などを基に本稿を執筆。