バーチャルオフィスとは?法人登記は可能か?創業融資は?社会保険や許認可は?メリット・デメリットは?
2022年05月26日
※こちらの記事は長谷工コミュニティが運営するビステーションのプロモーションを含みます。
コロナ禍以降、オフィスの縮小トレンドや、オンラインミーティングの普及などによって、バーチャルオフィスのニーズが高まっています。
一方で、まだバーチャルオフィスを利用したことのない方は、実体がないオフィスをどのように利用できるのかが想像しきれず、不安を感じているという声もお聞きします。
そこで、バーチャルオフィスは、どのように使えるのか?法人登記や創業融資、社会保険や許認可は可能か?などのよくあるご質問に答えるとともに、メリットとデメリットについても解説いたします。
バーチャルオフィスとは?わかりやすくいえば、住所(登記)だけを借りられるサービス
バーチャルオフィスとは、仮想の事務所。実体のない事務所を指します。具体的には、住所だけを利用することができるサービスです。
会社を作ったが、自宅の住所は利用したくないという方や、都心の住所を利用したい方、とにかくコストを抑えて会社の住所を持ちたいという方に人気のサービスです。
また、施設によっては、住所だけではなく、法人登記ができたり、バーチャルオフィスを契約すると、特典として、併設されているシェアオフィスのドロップイン(一時利用)料金が割引になるといったサービスもあります。
バーチャルオフィスの最大のメリットはコスパの良さ。賃貸と比べると数百万円の差に⁉
以前は、多くの企業は、自社用でオフィスを構える場合、賃貸契約をして利用していました。では、なぜ、バーチャルオフィスのニーズは急激に高まってきたのでしょうか?
これには、たくさんの要因があると考えられますが、最も大きな要因のひとつに、抜群のコストパフォーマンスがあります。
金銭的な負担の具体例を確認してみましょう。
一般的な賃貸借契約でオフィスを用意した場合にかかる費用の例
- 保証金として、平均的に、家賃の6か月~12か月分を支払う必要がある
- 執務スペースのほかに、普段は余り使わなくても、自社で受付や会議室の用意が必要になるケースが多い
- 自社で内装工事の手配が必要になるケースがある
- 自社で、机や椅子などの什器や、電話機や、コピーなどに使う複合機を準備する必要がある
- 什器備品は減価償却耐用年数があり、すぐに経費で落とせない
- 電話回線やインターネット回線を独自に用意する必要があるケースが多い
- 退去時に原状回復工事費用がかかる
従って、一般的な賃貸借契約でオフィスを用意しようと考えた場合、小規模のオフィスであっても、家賃の他に、初期費用として数十万円から数百万円の費用が必要となることが多いと言えます。
また、保証金は、キャッシュフローを大きく痛めることになるのも気になる点です。仮に15万円のオフィスで半年程度の保証金であったとしても、約90万円が動かせないお金になってしまうため、軽くは考えることはできません。
一方、バーチャルオフィスの場合、施設によりますが、各種オプションを利用したとしても月額1万円前後、保証金も3か月程度(一般的な賃貸の50~75%OFF)で利用することができます。
また、受付や会議室は、共有となるため、必要なときにだけ利用することができたり、机や椅子は備え付けであったり、複合機も性能のよいものを共有して利用することができるなど、必要なものは共有して利用ができるため、無駄になってしまいがちな家賃や経費を大幅に抑えることができます。
バーチャルオフィスに似た、コワーキングスペースやレンタルオフィスとの違いは?
さきほどご紹介したとおり、バーチャルオフィスの基本サービスは、住所利用や登記利用ができる一方、使えるスペースはないというサービスです。
一方、コワーキングスペースは、住所利用や登記利用に加え、カフェなどのような共有スペースをシェアして使えるというサービスです。
レンタルオフィスは、住所利用や登記利用に加え、区分けされた一区画を、自社専用のスペースとして利用できるサービスです。
従って、作業場所があるか?その場所は自社専用で使えるかどうか?と考えていただくとわかりやすいのではないでしょうか。
バーチャルオフィス、コワーキングスペース、レンタルオフィスは、どのように選択すべきか?
上記の特長を踏まえて、それぞれのオフィスの選び方を、具体的なご要望ベースでまとめたものをご紹介いたします。
バーチャルオフィスを選択した方がいい場合
- 作業場所は、別で確保しているため登記や住所だけ利用したい
- とにかくランニング費用を抑えたい
- 自宅住所は使いたくない
- ミーティングはオンラインがメインなので、場所は不要
コワーキングスペースを選択した方がいい場合
- 1人~数名で利用したい
- 個人事業主で、オフィス費用をかけたくない
- 法人だが、少人数なので、オフィスにあまり拘らない
- 作業場所を確保したい場合
- 将来、人数が増えても対応できるようにしておきたい
- 多少の荷物をおけると嬉しい(少量の荷物ならば、ロッカーがある施設もあります)
レンタルオフィスを選択した方がいい場合
- 快適なオフィス環境・執務環境を整えたい
- 周りの目を気にしたくない
- 自分や社員の荷物を置きたい
- 許認可の必要な事業を行いたい(一部のみ対応)
- 感染症対策を、とにかくきっちりとしたい
- 将来人数が増える可能性がある
- セキュリティを確保したい
- 支店利用したい
このような明確な基準を持っておくと、どの施設が自社にあっているかの判断がしやすくなるでしょう。
他社は、どのようなケースでバーチャルオフィスで登記をするのか?バーチャルオフィスでの法人登記利用事例
他社でのバーチャルオフィス×法人登記の利用事例を確認していきましょう。
まず、前提として、他社からの信用を得るためには、法人である必要があるケースが多いです。そして、法人である以上、登記が必要となります。そこで、どこで登記をするかという選択肢の中でバーチャルオフィスでの登記という選択肢が生まれます。
バーチャルオフィスで登記をする場面として、有効な方法は、大きく分けると、次の3つの場面です。
➀創業期┃バーチャルオフィス活用方法の具体例
創業期は、とにかく、不要なコストを抑えることが重要です。新しいことへチャレンジするのですから資金的な余裕は少しでも多い方がいいため、バーチャルオフィスを利用して、資金的な余裕をもっておくということは非常に有効な方法であると言えるでしょう。
②時期にかかわらず、とにかくコストを抑えたいとき┃バーチャルオフィス活用方法の具体例
先ほど、ご紹介したとおり、バーチャルオフィスでは、家賃、保証金を大幅にカットできます。作業場所は自宅やカフェでいいという方は、コストをかけずにオフィスを持つことができます。
➂社員の多くがテレワークを活用しているとき┃バーチャルオフィス活用方法の具体例
テレワークを導入し、多くの社員が出勤する必要がなくなった場合、広いスペースを維持しておく必要はないかもしれません。WITHコロナを経て、テレワークが当たり前になった現在、物理的には、誰も出社しないという方法もありえます。賃貸オフィスを解約し、バーチャルオフィスを利用することにより地代・家賃をミニマイズするという方法も有効な手段であると言えるでしょう。
バーチャルオフィスで、銀行口座(法人口座)は開設可能?
バーチャルオフィスの場合でも、銀行口座(法人口座)開設はできるのでしょうか?
結論としては、充分に開設できる可能性がありますし、実際に多くの企業が、銀行口座を開設できています。ただし、銀行によっては厳しい判断をするケースもあるため、注意が必要です。
かつて、マネーロンダリング(資金洗浄)や、投資詐欺などの犯罪に銀行口座を利用されるという事件が相次いで発生した時期がありました。こういった事件を防ぐため、現在は、犯罪収益移転防止法などにより、事業実態の調査や、法人実態の有無、代表者の経歴(反社会的勢力との繋がり等)などを、厳しくチェックされるようになっています。
こういった背景から、過去にその施設で金融事件が発生していた場合、その施設に対する信頼度(入居審査をきちんとしていないのではないか?等)が低くなります。従って、面倒に感じても、入居審査がきちんとある施設を選んだ方が無難であると言えるでしょう。
銀行の口座を開設できるか否かのポイントは、実体があるか否かです。既に事業実態があったり、事業計画がきちんと書けていたり、書類の提出がきちんとなされるなど、金融機関が、実体があると判断できる情報があればあるだけ、銀行口座(法人口座)を開設できる可能性は高まります。
長谷工コミュニティが運営するビステーションでは、入居者向けのサービスとして、税理士などの専門家へ無料で相談できるサービスがありますので、併せてご利用を検討いただくのも、ひとつの手段であると言えるでしょう。
ただし、その他の審査項目、事業内容が不明確である場合や、資本金があまりにも少額である場合、代表者の過去の経歴などによって、審査の結果、口座の開設ができないという可能性はあります。この場合は、銀行口座を開設できない理由が、バーチャルオフィスを利用しているからという理由ではないため、法人で一般のオフィスを賃貸したとしても口座開設は難しいという可能性もあります。
参考1:全銀協WEBサイト
https://www.zenginkyo.or.jp/topic/hansyuuhou/qa/
参考2:金融庁WEBサイト
https://www.fsa.go.jp/houan/154/hou154_01b.html#:~:text=(1)%E9%87%91%E8%9E%8D%E6%A9%9F%E9%96%A2%E7%AD%89%E3%81%AF,%E7%A2%BA%E8%AA%8D%E3%81%97%E3%81%AA%E3%81%91%E3%82%8C%E3%81%B0%E3%81%AA%E3%82%89%E3%81%AA%E3%81%84%E3%80%82
バーチャルオフィスは、社会保険の加入などにおいても心配はいらない?
まず、大前提として、社会保険の加入は要件を満たした場合(法人や5人以上従業員がいる場合)、加入が必要となるものです。
一方で、各種書類の保存義務(雇用保険法施行規則第143条(書類の保管義務)、労働基準法109条(記録の保存)、健康保険法施行規則第34条(事業主による書類の保存))があることから、自社用の賃貸オフィスでない場合は大丈夫なのかとお問合せをいただくケースもありますが、バーチャルオフィスの場合、施錠ができるレンタルロッカーをご利用いただく方法があります。(ロッカーがあるか否かは運営施設によって違いがあります。)これであれば、会社住所に書類を保管できますので、問題ありません。
バーチャルオフィスで、許認可取得はできる?
まず、結論からお伝えすると、バーチャルオフィスでは、許認可は取得できないケースが多いです。なぜならば、事務所としての実体がないからです。従って、許認可が必要な場合は、レンタルオフィスを選択する方が賢明だと言えるでしょう。
バーチャルオフィスの利用を検討される代表的な許認可事業について、もう少し詳しく確認していきましょう。
ネットショップ:〇
ネットショップを開業する際、バーチャルオフィスを活用することは可能です。
ネットショップを開業する場合、特定商取引法に基づき、事業者の住所などを記載する必要がありますが、バーチャルオフィスを利用することで、自宅の住所を知られることなく、ネットショップを開設することが可能です。
(個人でバーチャルオフィスの利用をしていて、ネットショップを作る際に、自宅ではなく、バーチャルオフィスの住所等を記載する場合は、特定商取引法で要請される記載内容とズレが出るため記載方法に工夫が必要になります。)
職業紹介業・人材派遣業に関する許認可:×
有料職業紹介事業や人材派遣業を行う事業所はバーチャルオフィスでは利用できません。
有料職業紹介事業や人材派遣業を行う事業所は、厚労省により、事務所の位置(場所)、構造、設備、面積などが、職業紹介事業を行うに適切であることが要件であると定められており、実体がある必要があります。
職業紹介業の事務所要件の詳細は、こちらからご確認ください。
厚労省:職業紹介事業パンフレット―許可・更新等マニュアル
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000116946.html
士業(弁護士、公認会計士、税理士、社労士、行政書士など):×
士業の事務所として、バーチャルオフィスを利用することは難しいでしょう。士業の事務所は実体が伴うことが必要とされています。
古物商:×
基本的には、古物商の営業所としてバーチャルオフィスを利用することはできません。
古物商の許可には「営業所」に関する条件が定められており、古物商の営業拠点(古物の売買、交換、レンタルを行う拠点)となる場所(実体)が必要とされているからです。
詳細は、以下からご確認ください。
参考:https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/tetsuzuki/kobutsu/index.html(警視庁)
不動産業:×
不動産業の場合は、バーチャルオフィスでの開業や許認可取得はできません。不動産業の場合、オフィスは実体が必要であり、さらに、自社専用の出入り口が必要であり、365日24時間いつでも独占的に使用ができ、専有部分で来客対応可能であることなどの各種条件があります。
参考:https://saitama.zennichi.or.jp/column/rental-office/(公益社団法人 全日本不動産協会 埼玉県本部)
建設業:×
バーチャルオフィスでは、建設業の開業や許認可取得はできません。
建設業の事務所には、さまざまな要件が定められていますが実体があることが前提とされています。
詳細は、以下からご確認ください。
参考:https://www.ktr.mlit.go.jp/kensan/index00000003.html(国土交通省関東整備局)
金融商品取引業:×
投資の運用や助言、代理などの金融商品取引業は、バーチャルオフィスでは、開業・許認可の取得はできません。
投資の運用や助言、代理などを行う場合、財務局で登録をする必要がありますが、その際には営業所を設ける必要があり、この営業所内には、法定された標識を掲げ、投資家からの問い合わせ対応や、当局からの照会等に真摯に対応する必要があるからです。
参考:https://www.fsa.go.jp/common/law/guide/kinyushohin/09.html#09-01(金融庁)
探偵業:×
探偵業をバーチャルオフィスで開業・許認可の取得をすることはできません。
探偵業を始める際には、公安委員会から「探偵業届出免許証」の交付を受け、営業所内に掲示する必要があり、実体のある事務所が必要となるため、難しいと言えるでしょう。
条件等の詳細はこちらからご確認ください。
参考:https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/tetsuzuki/tantei/tantei_menu/tantei_todokede.html(警視庁)
バーチャルオフィスでも、VCやエンジェル等投資家から出資を受けることは可能?
バーチャルオフィスを利用していることが、出資に不利になってしまうということは、基本的には考えづらいでしょう。
投資家は、将来の投資リターンに対する期待がある場合か、相手を応援したいという場合に出資をします。そのオフィス形態がどのようなものであるかという点よりも、実績がどれくらいあるのか?人間的に信用できるか?といった点から判断されるのが通常です。
従って、その事業がバーチャルオフィスで行われているか否かという点から、出資の可否を判断するということは、基本的には、ないと言えるでしょう。
ただし、バーチャルオフィスの場合、実体を掴みづらいという特性があるため、事業実態がないと判断されてしまった場合は、投資や出資に影響する可能性もあります。
大手企業との契約は可能?その他、会社を経営していく上で、バーチャルオフィスで困ることは?
これから、バーチャルオフィスでの起業を考えている方は、大企業との契約ができないなど、なにかしら将来の企業経営においてバーチャルオフィスが不利に働いてしまうのではないかという不安を持つかもしれませんが、これらの点についても、基本的には、特に障壁になるようなことはないでしょう。
例えば、この記事を作成している、当社(長谷工コミュニティ)は、会社法上大会社と分類されますが、取引先の審査要件に、バーチャルオフィス利用企業ではないことといった審査基準はありません。
バーチャルオフィスを利用する場合のデメリットや注意点とは?
ここまでで、バーチャルオフィスの良い点をご紹介してきましたが、デメリットや注意点もお伝えいたします。
大きくわけると、次の3点には、気をつける必要があります。
➀許認可が必要な場合は、基本的に難しい。
②入居予定のバーチャルオフィスに全く同じ、または似た名前の企業はないか?
バーチャルオフィスは、住所などをシェアするサービスです。従って、自社と全く同じ名前の会社や似た名前の会社があると、取引先などが混乱してしまう可能性が高くなってしまう可能性があります。この点については、入居前によく確認しておいた方がよいでしょう。
➂バーチャルオフィスのサービス内容や、付随するサービス内容は、自社の要件に合致するか?
バーチャルオフィスのサービス内容は、サービスを提供する企業によってさまざまです。
例えば、併設されているコワーキングスペースへのドロップイン(一時利用)が割引になるケースもありますが、そもそもそういった施設が併設されていないケースもあります。
どのようなサービスがあるのかを、事前に、よく確認しておくと良いでしょう。
バーチャルオフィスの選び方、9つの基準
バーチャルオフィスを選ぶ際は、次の9点を、事前に確認しておくと良いでしょう。
- 法人登記はできるか?
- 郵便物等の転送は可能か?
- 電話番号の取得や転送は可能か?
- バーチャルオフィスの住所や場所は、自社の目的にあっているか?
- .利用予定の施設内に、同じ名前、似た名前の会社がないか?
- (一時利用ができる施設の場合)コンシェルジュ等の総合受付がいるか?(必要な場合)
- (一時利用ができる施設の場合)コンシェルジュ等の来客対応、ティーサーブサービスはあるか?(必要な場合)
- (一時利用ができる施設の場合)応接室や会議室はあるか?どのくらいの数があるか?料金はいくらか?利用したい場合に利用できそうか?また、代替手段はあるか?
長谷工コミュニティが運営するビステーションのバーチャルオフィス
長谷工コミュニティが運営するビステーションは、駅近の立地やコンシェルジュサービスはもちろんですが、経営に関するサポート体制も充実しています。
弁護士や税理士等の専門家へ初回無料で相談できるサービスなどもありますので、不測の事態が発生した場合なども安心です。
ビステーションに関して、詳しくは、こちらからご確認ください。
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この記事の執筆者
unite株式会社代表取締役 角田 行紀
起業支援、事業支援や、最適な士業の無償紹介、士業が講師を務める企業研修事業(主に法務・労務・税務・財務)、経営者や士業などが講師を務めるセミナー事業などを行うunite株式会社代表取締役。
多くの起業家からの相談や、士業による起業希望者へのアドバイス、自身の起業経験などを基に本稿を執筆。