【税理士監修】起業するには個人事業主と法人どちらが良い?それぞれの特長とメリデメ
2024年11月28日
※こちらの記事は長谷工コミュニティが運営するビステーションのプロモーションを含みます。
起業をする際の事業形態で悩む方は少なくありません。そこで、この記事では、個人事業主と、法人の特長をご紹介し、どちらの形態で起業するべきかを判断する際の基準を7つにまとめて、ご紹介させていただきます。ぜひ、参考にしてみてください。
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個人事業主とは?個人事業主の事業の特長とは?┃個人事業主と法人の違い
個人事業主は、事業を行う個人を指します。
個人事業者の具体例としては、小売業や卸売業をしている人をはじめ、賃貸業や取引の仲介、運送、請負、加工、修繕、清掃、クリーニング、理容や美容といった業を営んでいる人などがいます。
また、医師、弁護士、公認会計士、税理士なども、個人事業主として事業を行っているケースがあります。
総じていえば、個人事業主として事業を行っている方は、店舗など消費者向けの事業を経営しているか、個人のプレイヤーとして活躍している事業者が多いといえます。
法人の経営者全体と比べると、事業規模が小さくなりがちなため、社会的な信用度は、やや劣るという印象です。(医師や弁護士などの資格を持って事業を行っている場合は、資格による社会的信用があり、一概には言えません。)
個人事業主には、以下のような特徴(メリット・デメリット)があります。
個人事業主のメリット
・事業を開始するまでの手続きが簡単で費用が安い
・利益が少ないうちは、税金の負担額が少ない
・税務申告や経理等の負担が少ない
個人事業主のデメリット
・社会的な信用度で考えると法人に劣ってしまう
・法人に比べて融資を受けにくい
・法人と比べると社会的信用で劣り、人材採用の場面で不利になりがち
・利益が多い場合は、逆に税負担が重くなる
また、個人事業主の中でも、青色申告をするケースと、白色申告をするケースの2種類のケースがありますが、基本的には青色申告の方がおススメです。
白色申告の方が、手続きがシンプルで簡単ですが、青色申告特別控除(最大65万円)が使えず、赤字の繰り越しもできません。
一方、青色申告は、最大65万円の青色申告特別控除が活用でき、固定資産の経費化(30万円未満)や、赤字の繰り越しができるなど、税制的なメリットも多いことが特徴です。
手続きは、やや大変になりますが、最近は、会計ソフトもあるため、そこまで難しく考える必要もありません。
法人とは?法人の事業の特長┃個人事業主と法人の違い
法人とは、法律により権利や義務を認められた組織や団体を指します。(民法33条、34条等)
また、起業をする際に一般的な法人形態としては、株式会社、合同会社、合資会社、合名会社の4つの形態があります。
いわゆる会社として、皆さんがイメージされるのは株式会社です。
株式会社は国内の単体法人のうち91.2%を占めます。次に多いのが合同会社です。合同会社は国内の単体法人のうち5.6%を占めます。さらに合資会社の構成比は0.4%、合名会社の構成比は0.1%となっています。
会社形態ごとの構成比:令和3年度 会社標本調査結果 法人数内訳 国税庁より
法人は、比較的大きな取引や、法人との取引を前提とする場合、選ばれやすい傾向にあります。大きな会社は法人でないと取引自体ができないというケースもあります。
法人には、以下のような特徴(メリット・デメリット)があります。
法人で事業を行うメリット
・社会的信用力が増す
・売上や収入が大きい場合は節税できる可能性がある
・借入のみならず、出資という手段が活用でき、使える補助金や助成金なども幅が広がる
・信用力が増すため、人材の確保がしやすくなる
・将来的に、事業を承継する場合も承継しやすい
法人で事業を行うデメリット
・設立に費用がかかり、手続きが複雑になる
・社会保険に加入する義務が発生し費用負担が大きくなる
・赤字でも法人住民税の負担がある
また、法人として事業を行う場合には、株式会社、合同会社、合資会社、合名会社の4つの形態のうち、どの形態で事業を行うべきかを併せて検討する必要があります。
おススメなのは、株式会社か合同会社です。
理由は、株式会社か合同会社については、責任の範囲が「有限責任」となるからです。
一方、合資会社、合名会社は、「無限責任」となります。
無限責任の場合、会社の債務、全額に対して責任を負うこととなり、例えば、会社が倒産したときは、会社の債権者に対して負債総額の全額を支払う責任を個人としても負うことを意味します。
従って、合資会社、合名会社は、リスクが大きいため、株式会社か合同会社の方がおススメです。
また、株式会社と合同会社では、より一般的なのは株式会社です。株式会社は出資をうけることができ、上場もできますが、合同会社は出資をうけることはできず、上場もできません。一方で、合同会社には、設立コストがやすく、比較的、自由な経営ができるというメリットもあり、最近、少しづつ増えている会社形態であると言えます。
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個人事業主と法人の違い、税金や経費、インボイス面ではどう違う?
個人事業主と法人の場合、税金や経費、確定申告やインボイス(消費税)は、どのように違うのかを確認しましょう。
まず税金については、次の表のようになります。
個人事業の場合、課税所得が900万円を超えると、税率が高くなります。
個人事業主 | 法人 | |
---|---|---|
税金の種類 | 所得税(最大税率45%) 個人住民税 個人事業税 | 法人税(最大税率23.2%) 法人住民税 法人事業税 |
赤字の場合 | 原則、負担なし | 赤字でも法人住民税の均等割7万円の負担必要 |
次に経費ですが、経費に関しては、基本的には、法人の方が経費として落とせる範囲が広いと言えます。
個人事業主は経費として落とせないが、法人は経費計上可能となる費用の具体例は次のとおりです。
・自分の役員報酬、賞与、退職金など
・福利厚生費
・健康診断費用
・生命保険の費用(法人が契約者となるケース)
・出張時の日当(旅費規程等が必要)
・社宅の家賃(会社名義で購入や賃借をして、自分や従業員へ貸し出すケース)
消費税については、年間の売上高が1000万円を超えている場合、個人事業主でも、法人であっても課税事業者として消費税の納税義務があります。インボイスの登録は任意ですが、課税事業者であればインボイスに登録する方がほとんどです。
一方、年間の売上高が1000万円以下の場合は、個人事業主でも、法人であっても免税事業者として事業を行うことができます。
従って、この点だけを見ると、いずれも大きな差異はありません。
ただし、新たに設立された法人については、設立1期目および2期目分について、納税義務が免除されるという仕組みがあります。(資本金の額が1,000万円未満の場合)ので、この点は、上手に活用できると良いでしょう。
個人事業主と法人の違いは?どちらが良い?どちらで起業するのかの7つの判断基準
起業を検討している方に、個人事業主で起業するのと、法人(株式会社など)で起業をするのは、どちらがよいかとご質問をいただくケースがあります。
そこで、判断の基準となることがらを7つにまとめましたので、よろしければ、参考になさってください。
個人事業主と法人の判断基準①法人相手(toB)の事業か、消費者相手(toC)のどちらを対象にした事業か?
先ほど、ご紹介したとおり、個人事業主と法人とで比較をした場合、法人の方が社会的信用度が高くなります。また、大企業の中には個人事業主とは取引をしないと決めている企業もあります。
従って、法人相手に事業を行う場合は、個人事業主のままで事業を行うよりも、株式会社や合同会社など法人化した上で事業を行った方が有利であるといえます。
一方、事業の内容が消費者相手の事業の場合(例えば飲食店やクリーニング店など)は、消費者の目線から見ても、相手が個人事業主なのか法人なのかはさほど気にならないと思います。 従って、起業後に行う事業が、法人相手(toB)の事業か、消費者相手(toC)の事業なのかで判断することは、事業形態を選定するための最重要ファクターであると言えるでしょう。
個人事業主と法人の判断基準②出資による資金調達を行いたいか否か
エンジェル投資家、ベンチャーキャピタル(VC)、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)などから、出資による資金調達をしたい場合は、個人事業主は不向きです。
可能性がないわけではありませんが、個人事業主の場合、エンジェル投資家などからの出資ではなく、借り入れ、もしくは法人を設立した後に出資という形になるからです。
前提として、出資は、相手の会社の株式とお金を交換するという契約です。
従って、個人事業主のままだと、そもそも出資という契約が成立しません。
ある程度、近い将来に、出資によるファイナンスを考えている場合は、事前に株式会社にしておく必要があると言えるでしょう。
個人事業主と法人の判断基準③従業員を積極的に採用したい場合(採用への影響)
ここ最近、採用が厳しい状況が続いています。また、この状況の背景には労働人口不足という日本国内の構造的な問題があるため、採用難は、今後も続いていく可能性が高いといえます。
一方、事業を大きくしたい場合には、人材が必要となり、人材採用は多くの事業者にとって課題になっています。
一般的に、個人事業主と、法人を比較すると、法人の方が事業規模も大きく、組織としても安定しており、福利厚生も充実していることから、採用募集をした場合に、応募が集まりやすくなるという構造があります。
したがって、採用を積極的にしたい場合には、個人事業主として事業活動するよりも、法人として事業活動をした方が良いと言えるでしょう。
個人事業主と法人の判断基準④経営者の収入を自由に変更したい場合
個人事業主と法人の経営者とを比較すると、収入の面では大きな違いがあります。 具体的には、法人経営者の場合、報酬(役員報酬)は年に一度しか変更できません。一方、個人事業主は、売上から、必要な経費や税金を支払った後のお金は、自由に使うことができます。
従って、収入を自由に変更したい場合には、個人事業主の方がいいと言えますが、収入の額によっては、税金が高くなります。収入(事業所得)が800万円を超える場合は、やや制約はありますが、個人事業主ではなく、法人の方が税金のことも考えると良いと言えるでしょう。
個人事業主と法人の判断基準⑤社会保険などを簡便にしたい場合
個人事業者で従業員5人未満の場合は、厚生年金や健康保険の加入が義務付けられていませんので、保険料の負担を避けることもできます。
一方、法人の場合、役員、社員、パート・アルバイトなど、一定の要件を満たした方全員が加入する義務があります。
従って、従業員5人未満で、社会保険の負担を軽減したい場合は、個人事業主を選択すると良いケースがあります。
個人事業主と法人の判断基準⑥一定以上の売上や利益などが見込める場合
お金の使い方・節税という面でも法人の方が有利です。税金は、所得に比例して高くなるからです。
個人事業主と、法人とで比較した場合、法人の方が、節税をするための手段が多く、節税できる金額も大きくなります。
このような背景もあり、個人事業主の方が、法人化するというケースも少なくありません。これを「法人成り」といいます。
法人化を検討する具体的な金額としては、売上高1000万円、年間利益900万円、収入(事業所得)800万円といった基準があります。これらをクリアできる場合、法人化を検討した方がよいと言えるでしょう。
個人事業主と法人の判断基準⑦大きな規模で事業を行いたい場合
事業規模を大きくしたいと考えた場合、資金調達、採用、節税など、さまざまな要因が関連します。
資金調達の面においては、法人の方が出資による調達のみならず、借入による調達など、調達方法の幅も広がります。
採用についても、上述のとおり、法人の方が応募者が安心するため、有利です。
節税についても、上述のとおり、節税の方法や幅が広がり、節税できる金額も大きくなるため、法人の方が有利です。
従って、将来的にでも、大きな規模で事業を行いたいと考える場合は、法人を選んだ方が良いと言えるでしょう。
まとめ┃起業するには個人事業主と法人どちらが良い?それぞれの特長とメリットデメリット
いかがでしたでしょうか?起業する際に直面する、個人事業主がいいのか?それとも法人がいいのか?と言う問題に対して、個人事業主と法人、それぞれの特徴をご紹介するとともに、税金や経費、インボイスの面での違いや、それぞれのメリットデメリットを解説させていただきました。
また、個人事業主がいいのか?それとも法人がいいのか?を選択する際の7つの判断基準をご紹介させていただきました。これから皆さんが実行しようと考える事業の内容や対象、規模によって、選択すべき事業形態は変わります。
ぜひ参考になさってみてください。皆様の事業が成功することを心より祈念しております。
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この記事の執筆者
unite株式会社/株式会社Brand Communication/株式会社Ageless 代表取締役 角田 行紀
起業支援、事業支援や、最適な士業の無償紹介、士業が講師を務める企業研修事業(主に法務・労務・税務・財務)、経営者や士業などが講師を務めるセミナー事業などを行うunite株式会社代表取締役。
多くの起業家からの相談や、士業による起業希望者へのアドバイス、自身の起業経験などを基に本稿を執筆。
この記事の監修者
若尾房市税理士事務所 代表 若尾房市
中小企業の成長促進剤@MBA税理士
税理士、MBA(経営学修士)、GCS認定コーチ
手探り経営に悩む中小企業社長に対して、 管理会計(未来を創造する戦略的会計)とコーチング(欲しい未来を手に入れる思考のサポート)を活用して、ときには視界を照らすヘッドライトとして、ときには視界をクリアにするワイパーとして、社長がその想い実現に向かって最高速度で突っ走るお手伝いをしています。
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