【弁護士監修】起業時に合資会社は向く形態?合資会社のメリットや合同会社などとの違いとは?

2024年09月27日

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※こちらの記事は長谷工コミュニティが運営するビステーションのプロモーションを含みます。

会社形態には合資会社、合同会社、合名会社、株式会社の4種類があります。起業家は、どの会社形態を選択するのが良いのか、合資会社は起業家に向くのか?を、メリット・デメリットの観点から比較し、ご説明します。

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合資会社とは?

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合資会社とは、会社法に定められた会社形態の1つで、新設できる4つの法人形態(合資会社、株式会社、合同会社、合名会社)のうちのひとつで、旧商法時代から残る、昔からある会社形態です。
合資会社の良い点は、株式会社などと比べ、自由に経営ができる点と、設立コストが低いという点です。
ただし、無限責任社員が必要であるという、大きなデメリットが存在するため、新設法人で合資会社を選択する人は、非常に少ないといえます。

合資会社は、起業時に選択する会社形態としておすすめできる?

 

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結論からお伝えすると、新たに起業をする際に、合資会社を選択することはおすすめしません。
先ほど、ご紹介したとおり、株式会社などと比べると、経営の自由度が高かったり、設立コストが低いというメリットがあるものの、無限責任社員が必要であるという、メリットを上回る大きなデメリットがあるからです。

2006年以前は、株式会社と、有限会社という会社形態がメジャーな会社形態でした。
しかし、株式会社の最低資本金は1,000万円、有限会社の最低資本金は300万円と、法人を作る際のハードルのひとつとなっていました。
一方、合資会社、合名会社は、資本金の制度がなく、ハードルが低いこともあり、しばしば活用されていました。
しかし、2006年の会社法改正により、株式会社の最低資本金は1円となり、有限会社は廃止され、合同会社という新しい会社形態ができたことにより、合資会社のメリットである経営の自由さと、設立コストの安さは、株式会社や合同会社でも実現可能となっており、新たに合資会社を作るメリットは、非常に少なくなりました。
逆に言えば、起業家が、新たに法人を作るならば、株式会社か、合同会社が良いでしょう。

※かつての合資会社と合名会社
合名会社では、各社員の個性が重視され、各社員に業務執行権や代表権などが付与されているため、みんなで作る場合には合名会社、一方、リーダーがいる場合には合資会社が選ばれていたようです。

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合資会社の特長は?無限責任社員、有限責任社員、代表社員とは?

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次に合資会社の特長などについて、解説します。

合資会社の特長は大きくわけると以下のとおりです。
・無限責任社員と有限責任社員で構成されていること
・社員2名以上が必要なこと
・持分会社であること(所有と経営が分離されていない)
・出資金の制度がない
・設立コストが安い
・取締役や監査役が必要ない
・会社法に違反しない限り、定款を自由に規程できる

合資会社は、1人では、設立することはできませんが、無限責任社員1名と有限責任社員1名の合計2名以上がいれば設立することができます。
合資会社は、持分会社であり、定款の自由度が高く、取締役などが必要ないため、株式会社などと比べると、自由度の高い経営ができます。
また、設立コストが安いことも特徴です。例えば株式会社と比較した場合、株式会社を設立する場合の登録免許税は15万円ですが、合資会社の登録免許税は6万円です。また、定款認証が不要なため、定款認証の手数料も不要となります(株式会社で資本金300万円の場合の定款手数料は5万円)。

合資会社の無限責任社員とは

合資会社の無限責任社員は、大きなリスクを背負うことになります。例えば、会社が負った責任・債務について、もしも会社がすべてを払い切る資金がない場合、個人が持つ財産からも返済をする義務が発生します。合資会社の無限責任社員は、大きなリスクを背負うことになります。例えば、会社が負った責任、債務について、もしも会社がすべてを払い切る資金がない場合、個人が持つ財産からも返済をする義務が発生します。
このように大きなリスクを負うのが無限責任社員の特徴です。

合資会社の有限責任社員とは

合資会社の有限責任社員は、一定のリスクを負うものの、ある程度リスクを回避できます。無限責任社員と違い、会社が支払えなかった場合でも、個人がその責任を負う必要はありません。ただし、会社に出資したお金は消失してしまいます。

合資会社の代表社員とは

合資会社では、定款で定めたものが、代表社員となります。一般的には無限責任社員が代表社員となりますが、無限責任社員でなくても、定款で定めれば有限責任社員であっても代表社員とすることも可能です。

合資会社のメリット・デメリット

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合資会社のメリット・デメリットは以下のとおりです。

合資会社のメリット

・経営の自由度が比較的高いこと
・会社設立費用が比較的安いこと
株式会社などと比べ、経営の自由度が高いとはいえ、もちろん、会社法などの法律に反しないということは前提条件となります。
また、会社設立費用は比較的安くなりますが、数万円の範囲です。

合資会社のデメリット

・無限責任社員が必要なこと
無限責任社員は会社の債務について、会社が支払えない場合、個人の財産からも支払が必要になります。つまり、自分の失敗のほか、部下の失敗についても個人的に債務を負ってしまう可能性があります。

合資会社を新設するメリットは、ほぼないといっても過言ではありません。

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合資会社と、合同会社、合名会社、株式会社の比較

合資会社と、合資会社、合同会社、合名会社、株式会社の違いをざっくりとご説明すると以下のとおりです。

合資会社

・無限責任社員と有限責任社員各1人ずつ必要
・自由度の高い経営が可能
・設立コストが安い
・新設法人には、あまり向かない

合名会社

・無限責任社員で構成
・自由度の高い経営が可能
・設立コストが安い
・新設法人には、あまり向かない

合同会社

・有限責任
・自由度の高い経営が可能
・設立コストが安い
・外資大手などが採用していることから、近年増加傾向

株式会社

・有限責任
・株主総会や、取締役会など法定されたルールに則った経営が必要
・他の会社形態より設立コストが高い
・国内法人の約78%が株式会社であり、信用度も高い

新しく法人を作る場合、株式会社か合同会社が良いでしょう。
理由は、合資会社と、合名会社は、無限責任社員が必要であるため、リスクが大きいからです。

株式会社にするのか、合同会社にするのかの判断については、
・設立コスト
・株式上場の可能性
・経営の自由度の担保
の3点から判断すると良いでしょう。

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eーStat┃政府統計の総合窓口を参考に作成

Googleやアップルなど外資の大手企業は、設立コストのやすさと、機関設定の柔軟性などから、合同会社を選択していますが、国内法人の約8割ほどは株式会社です。(上図参照)
特に、こだわりがないのであれば、株式会社を作るという方向でいいと言えるでしょう。

また、それぞれの会社形態について、詳しく知りたい場合は、以下の記事をご参照ください。

起業家に向く会社形態は、株式会社?合同会社?合名会社?合資会社?それぞれの違いは?

合資会社は、どのように略される?銀行での表記は?

会社形態は、しばしば略称で表現されます。ここでは、合資会社とその他の会社形態についての略称をご紹介します。

合資会社の略称
合資会社: (資)、銀行表記: (シ)

合資会社以外の会社形態の略称
株式会社: (株)、銀行表記: (カ)
有限会社: (有)、銀行表記: (ユ)
合名会社: (名)、銀行表記: (メ)
合同会社: (同)、銀行表記: (ド)

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例として、合資会社の有名企業には、どのような企業がある?

合資会社には、どのような会社があるのでしょうか?

例えば
・合資会社八丁味噌(愛知県岡崎市に本社を置く老舗味噌メーカー)
・村尾酒造合資会社(鹿児島県薩摩川内市の明治からある老舗酒造メーカー)
などがあります。
現在では、いわゆる老舗のメーカーなどに多いのが特徴です。
また、かつては、合資会社だったが、現在は株式会社に組織変更をしている企業も少なくありません。

その他、合資会社について、詳しく知りたい方は、九州産業大学学術リポジトリに掲載されている論文などを見ても楽しめるでしょう。

旧商法機における合資会社の統計的分析┃九州産業大学学術リポジトリ

まとめ┃【弁護士監修】起業時に合資会社は向く形態?

いかがでしたでしょうか?合資会社について、解説をさせていただきました。
合資会社は、旧商法時代は、活発に活用されていた会社形態ですが、2006年の会社法改正以降は、比較的マイナーになっている会社形態です。
その大きな要因としては、無限責任社員が必要であるというデメリットが存在し、合資会社が持っていたメリットを、合同会社(一部、株式会社でも)などでも実現可能であるという点があります。
新設法人を作る際に、悩んだ場合は、弁護士や司法書士、行政書士などの士業に相談すると良いでしょう。

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この記事の執筆者

unite株式会社/株式会社Brand Communication/株式会社Ageless 代表取締役 角田 行紀

起業支援、事業支援や、最適な士業の無償紹介、士業が講師を務める企業研修事業(主に法務・労務・税務・財務)、経営者や士業などが講師を務めるセミナー事業などを行うunite株式会社代表取締役。
多くの起業家からの相談や、士業による起業希望者へのアドバイス、自身の起業経験などを基に本稿を執筆。

https://www.unitenco.com/
https://cqree-holdings.jp/service/

この記事の監修者

ホライズン法律事務所 代表弁護士 阿相 貴大 東京弁護士会所属

2つの法律事務所での勤務経験、ヤフー株式会社での勤務経験を活かし、企業法務をスタートアップや多くの事業会社へ提供。
企業法務においては、ビジネスのスピード感を損なわぬことが大切と考え、法的アドバイスも、ブレーキとなるだけでなく、適切に分析し、どのリスクを取るべきか、各々の選択肢のメリット・デメリットを提案し、正しい経営判断のサポートになる助言を提供することをモットーとする。

2014年中央大学法学部法律学科卒、2016年弁護士登録。
その後、2か所の法律事務所での経験、ヤフー株式会社への出向や、事業会社での経験を積み、2022年独立、現在はホライズン法律事務所を経営


https://horizonlaw.jp/